top of page
執筆者の写真Shingo Tsuda

「デザインの敗北」を生み出す構造的問題

以前、Twitterでこのような投稿がバズりました。


この記事では、これについてさらに細かい側面から、1人のデザイナーとして見方を書いていきます。



デザインを司る「色とシルエット」



人間の眼は、目の前に広がる空間や物体を常に「光情報」として受け取り、

それらを様々な情報として脳内で分解して、内容を理解していきます。


特に、投稿にもある通り、色情報は視覚情報のうち6割以上ともいわれます。








身近なロゴ、たとえばあなたが昨日のお昼ご飯を食べたお店のロゴを思い出してみて下さい。


そして、それを記憶の範囲で紙にスケッチしてみて下さい。

どうでしょう、たぶん相当に難しいはずです。





人間は、色や若干のシルエットは覚えていますが、細かい部分まで覚えられる人はそこまでいません。

それほど人間の脳は、「色」と「若干のシルエット」で多くの物事を認識しています。




「デザインの敗北」と呼ばれるわけ



以上のことから、「色を削ぎ落とすこと」は「伝える情報の6割以上を無くすこと」とほぼ同義とも言えます。


ここで、看板に求められるそもそもの用途に立ち返ってみます。




看板には


1.人間を、正しい場所に、スムーズに案内する「誘導性」

2.景観やインテリアを損ねず引き立てる「インテリア性」


その二つが主に求められます。



特に、どちらとも適切にバランスをとって機能しておくことが理想ですが


「デザインの敗北」と呼ばれるデザインは、1の「誘導性」を犠牲にしてまで、2の「インテリア性」を優先してしまった結果、


多くの人が迷ってしまうデザインになってしまっているのです。



「デザインの敗北」の根本的な問題



ここまでの内容は、知識として、多くのデザイナーが把握していることです。


ですが、やはり「どっちに入れば迷うトイレ」が生まれ続ける。

それはなぜか?


最後に、その原因と、明日から実行可能なその解決策や考え方をまとめました。


我々の日常や、あなたのビジネスに、「最適なデザイン」を溶け込ませるヒントになれたら幸いです。




現場で起こりうる2つのミス



個人的にはデザイナの主観的勘違いと決裁者への提案ミスの二つの可能性があるのではないか、と思います。



デザイナーは、「視覚情報に敏感な生物」です。


絶対音感を持つ人が、ふつうの雑音に音程を感じ取るように、デザイナーの多くは、平均的な人の数倍程度、視覚情報を細かく認識できる という傾向があります。


デザイナーを始めたての頃、とある複雑なロゴを作っていた時、後ろから画面を覗いた同僚(デザイナーではない)に「赤い丸のロゴ?」と言われ、ハッとしたことを覚えています。


私としては、かなり複雑で、丸とは程遠いロゴを作っていたのですが、彼は丸だというのです。


これは一例に過ぎませんが、デザイナーは、意外と自分の見る世界の鮮明さを当たり前のように捉えているので「一般的な人がどのように情報を受け取っているか」を正確に理解していないことが多いです。


ですから、細かい造形で伝えようと(伝わるものだと)、勘違いしてしまう。


というケースをよく見かけます。


実際は、多くの人はそんなに見分けがつかないものまで。





高齢者の方や目に何らかの疾患がある方ともなると、デザイナーとの見え方は大きく異なるでしょう。


ですから、デザイナーとしては伝わると思っていても、多くの人にはわからない、

ということが往々としてあります。これらは、デザイナーの我々が注意深くチューニングしていくべきです。


続いて、

決裁者への提案ミス の可能性。


これはデザイナーさんから複数コメントをいただいたもので、自分もその可能性が大いにあると思うのですが、


デザイナー側は色分けをするべきだと信じているが、クライアントの担当者さんが「モノトーンでオシャレがいい」という一点張りなのを説得するまでには至らず、妥協案としてモノトーンが通ってしまった


というケースです。



これは実際にデザインの現場で非常に頻繁に起こることです。


そもそも限られた時間の中で、この記事ほどの「色の重要性」を説得するに至ることは難しく、

結果的に「色はない方向で」という顧客の鶴の一声に「いやでも、それはダメです」という説得ができない状態に陥る。



この問題はとても複雑で、単純にデザイナーの提案不足・コミット不足のケースもあれば、


そもそものデザイナーの存在意義を顧客側が理解していないが故に、デザイナーが諦めてしまっているケースも多くあります。



デザイナーが下請け受注者、という色の強い日本においては、顧客としては要望を伝えているだけではあり、そこに非はないからこそ、お互いが気付きにくい溝です。


本来はデザイナーがマイノリティーだとしても、同調圧力に負けず主張するべきだ。。という正論こそよく言われることでもありますが。。


現場はそんな単純なものではなく、デザイナーを一点責めできないのも実情。



デザイナー側は提案力をより強化したり、必要に応じたワークショップなどを開催することでこのような問題を回避することもできる可能性もありますし、


顧客側は「意外とデザイナーは、1の提案の奥に10ぐらいの知識や前提を隠し持っている」という認識を持っていただけると、


最適なデザインが完成していくのではないか、と思っています。

(この辺り「デザインの理想と、現実」のような話は、また後日書こうと思います。)






まとめ




今回は色とシルエットについてお話ししました。



もちろん色情報の比重を大きくするのであれば、色覚多様への理解は忘れず徹底しましょう。


特に、赤と緑、青と紫、のような色差を扱う時は要注意です。



そしてグローバルにおいては、赤と青が女性と男性として認識されていないこともあるようですし、


何より「赤が女性、青が男性というステレオタイプが本当に適切なのか」は追加で我々が議論していくべきことでしょう。



最後に


本記事のように

「デザインと、経営と、心理学と」というジャンルで、

週1ぐらいのペースで更新していくので、是非ともまた読んでみて下さい。


ご精読ありがとうございました。


つだしん


閲覧数:2回0件のコメント

댓글


bottom of page